吉旦日記

きったんの日記

これまでで一番困った客と警察の対応の思い出

僕は賃貸マンションを管理する仕事をしています。この時期になると思い出す事件があるんです。

賃貸住宅の内覧って言うとスタッフと一緒に見るイメージが強いけど、お客様に鍵を貸して一人で見に行ってもらうケースもあるんですね。もちろん弊社では契約が決まったら鍵を取り替えるのでセキュリティの問題はありません。

その日はインターネットで内覧を申し込まれたお客様に17時までに返してもらうという約束で鍵を貸したのです。

思えば鍵を借りに来た時から少し雰囲気が怪しい感じはしたんですよ。なんとなく受け答えがおぼつかない感じ。でも鍵の貸し出しの書類に住所と名前を書いてもらうとちゃんと書けるし身分証も確認したので貸しちゃったのです。

ところがそのお客様が時間になっても鍵を返しに来ない。それで電話したら「自宅にいる」と。さらに「お前は誰だ?鍵など借りてない」と言って話にならないんですね。

その時はおいおい鍵をパクる気かよと思いました。そこでとりあえず勝手にその部屋に入られないように業者さんに玄関を開かなくしてもらうよう手配。最悪鍵を交換しちゃえばこっちのもんです。

これでとりあえず一安心と思って、事務所で業者さんからの連絡を待っていると、現地についた業者さんから電話が。玄関の閉鎖が無事終わったのを確認したら今日のところは終わりにして帰ろうと思って話を聞きました。

そしたらなんと、問題の部屋に人がいて「ここは俺の家だ!」と主張し、鍵をかけて家から出てこないというじゃないですか!どうやらそのお客様は内覧のために鍵を借りただけのはずが、「鍵をもらったんだからもうもう自分の家だ」と思いこんでいるらしいんですね。

マジかよ!うちの管理するマンションでまさか空き家の不法占拠が発生するとは!その時点ですでに時刻は20時。あいにくその日は僕と主に事務仕事を担当してくれている女性スタッフ一人しか残っていません。

こうなったら仕方ない!僕が行くしかない!そして警察を呼ぼう!

僕は自転車に飛び乗ると10分程で現場に急行し、110番。事情を話して5分程でこれまた自転車に乗ったお巡りさんが駆けつけてくれました。

そこからは部屋の中に立てこもるお客様、いや、ここまで来るともうお客様じゃない気がしますが、とにかく出てきてくれるように説得です。しかし、相手は「ここは自分の家」と主張して一歩も引きません。

押し問答を30分ほど続けていた頃でしょうか、今度はパトカー2台で4人の警察官が応援にきました。

よし!これならイケるんじゃないか!玄関の鍵は合鍵があるしドアチェーンは工具があれば簡単に切れます。さらにこっちは警官が5人!ドアを開けてヤツを確保だ!!というようなことを警官に、伝えてみたところ耳を疑うような返事が。。。

「いや、でもこれ犯罪じゃないでしょ。事件性ないと逮捕はできないですねー。」

はぁ?人の家に勝手に鍵かけて立てこもり出ていかないのが犯罪じゃない!?そんなバカな!

「鍵はあなたが貸したんでしょ?だったら不法侵入じゃないし。なんで貸したの?」

え?鍵貸したのが悪いの?そりゃ不用心だったかもしれないけど、それと立てこもりは別問題でしょ。不法侵入じゃなくても不退去罪でしょ!?それで事件性がないわけないじゃないですか!めんどうだから民事不介入とか言って帰ろうとしてませんか??

時間はすでに22時になろうとしています。そんなこんなで部屋の前でゴタゴタしていると同じマンションの住人も玄関から顔を出して様子を伺っています。

まったくどうすればいいんだ!と思ったその時!あの不法占拠野郎がうるせぇなぁって顔して出てきたんですよ。そして「この家うるさくて住んでられないから契約解除するわ」と言ったんです。いや!いつ契約した?いつだ!?言ってみろ!

あっけにとられている僕らを横目に契約解除をしたお客様は鍵を管理会社(要するに僕)に返し、悠然とどこかへ消えていったのでした。そして警察官たちも「じゃ!これでいいですね」とこれで一件落着とばかりにサッサと帰ってしまったのでした。

その後一人残された僕はマンションの住人に囲まれて事情を聞きまくられ、「ああ、僕が立てこもりたい」と思ったのでした。