吉旦日記

きったんの日記

マンション管理会社と孤独死との戦い

高齢者の孤独死が増えています。高齢化と核家族化がすすんで、高齢者の一人暮らしが増えているのだからあたり前のことではあるのですが、とても寂しいし、怖い話です。

特に東京では孤独死がどんどん増えています。全国の孤独死の1/3が東京23区内でおきているという話も聞いたことがあります。

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出典:4 生活環境|平成30年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府

上のグラフは内閣府のホームページにあったものです。東京23区内の高齢者の孤独死をまとめたものですね。平成15年には1,451件だったものが、平成28年には3,179件と倍増しています。

高齢者の孤独死はとてもおおきな社会問題です。僕も社会派ブログぶって高齢者の孤独死が増えた原因や対策、政府の役割などを書いてみてもいいのですけど、賃貸マンションの管理をしている立場からすると孤独死はもっと現実的な目の前の問題なのです。

なにせ、僕が関わっている物件だけでも年間に数件は孤独死がおきているからです。

賃貸マンションで孤独死がおきると事故物件になります。状況にもよりますが、次のお客様に貸す前にフルリフォームすることがおおいです。費用は100〜200万円といったところでしょうか。さらに家賃も減らさないといけません。弊社では5年間半額です。家賃10万円の物件なら5年で300万円の損失になります。

なので大家やマンション管理をしている会社は孤独死をなるべく避けたいのです。もちろん人道的にもですよ!

しかし、介護施設ではなく住宅を貸しているだけの賃貸マンションではできることはほとんどありません。せいぜい管理人が定期的に声をかけたり、しばらく姿が見えないと様子を確認しにいく程度しかありません。

その程度の活動でも定期的にしっかりとやっているとそれなりに効果はあるものです。お部屋で倒れているのを救出するなんてこともあるし、支援が必要そうな高齢者の方には自治体の福祉を紹介して生活が改善したりといったケースは少なくありません。

それでも孤独死をなくすことはできず、せいぜいちょっとは減らしているのではないかなといったところ。やはり高齢になれば一人暮らしは避けて家族と暮らすか、できなければ施設に入るかしなければ孤独死の可能性はつきまとうのですよね。

そうして孤独死のおきた部屋を何とかするのは僕の仕事です。稀には警察が遺体を引き上げて荷物やお亡くなりになった跡はそのままなんて部屋に入ることもあるのです。

先日は、お風呂でお亡くなりになって発見まで半月ほど放置されてしまった部屋を確認しに行きました。もちろん遺体は警察がすでに引き上げていましたが、なんともいえない独特の匂いが染み付いています。入った瞬間に腐っていたんだなとわかります。

それでも中を確認しないわけにはいきません。電気はつかないので薄暗い中を入って行きます。浴室で亡くなっていと聞いていたので、そこまでは大丈夫だろうと洗面所に踏み込んだときです。「ベチャッ」という嫌な音がして、次の瞬間に靴の中に冷たいものが染み込んできます。

「うわ!やっちゃった!」

気づいたときにはもう遅い。恐らくお亡くなりになったときにシャワーかなにかを出しっぱなしにしていたのでしょう。腐った遺体の一部が排水管につまり、溢れた水が洗面所の方にも溜まっていたんですね。踏みつけたところには大量の髪の毛が浮かんでいました。

と、こんなことにも徐々に慣れてくるのです。この現場に同行していたリフォーム業者の新人さんは僕がたいして動じないのを見て「常人じゃない。こっちの世界に戻って来れないんじゃないですか?」ととんでもないことを口走っていました。失礼だな。

いずれにしても孤独死は誰にとっても嫌なものです。こうした問題が高齢者がアパートやマンションを借りようとしても拒否されるという別の問題の原因にもなっています。

このままでは高齢者の孤独死はこれからもどんどん増えていくでしょう。なにか有効な対策がでてくればいいんですけどね。